1回目 ~温泉は自然がくれたカラダの回復剤~

 山間のひなびた温泉が無性に好きである。特に湯治の名残のある温泉地には郷愁をそそられる。

 私の温泉好きには、母方の祖父母の影響が大きい。私の育った島根県では農繁期が終ると近くの温泉に「泥落とし」と言って、忙しかった農作業の疲れを癒し、来年からの英気を養うのが一般的であったと思う。初孫であった私もよく連れて行ってもらった記憶がある。四、五日逗留するいわゆる湯治である。そんなDNAを引き継いだのであろうか、私の孫も温泉が大好きである。

 私のふるさと島根県浜田市金城町には、湯質日本一でつるつる美肌の湯で有名な「美又温泉」がある。美又川沿いの閑静な山の湯で、私の温泉好きの原点でもある。この地域の伝統芸能に「石見神楽」があり本場中の本場である。
10月の地域の秋祭りには、地元の神社で神楽舞が奉納され夜通し笛と太鼓が響き渡る。近年は地元の人だけでなく全国からのお客様も見られ、いわゆる砂かぶり席状態でで堪能できるスポットである。

 周辺には山陰の伊香保と呼ばれ、病後回復の効能で名高い名湯「有福温泉」がある。階段状に沿って旅館街が並び石見地方随一の温泉地であろう。旅館では浜田港から水揚げされた、とれとれの魚介類が夕食に並び舌鼓を打つ。特に「ノドグロ」は最高である。また、万葉歌人柿本人麻呂が、妻と共に湯浴したと言われ縁結びにちなみ、名産の石見瓦のミニチュアを摸して作った「変わらぬ愛」のモニュメントが女性に大人気だ。また「外湯」が3ヶ所もあるも温泉ファンには嬉しい。

神楽とノドグロとモニュメント

 国道9号線を浜田市内から西に向かうと三隅町がある。この町で見逃せないのが「石正美術館」である。女性の美しさを追求した巨匠石本 正画伯の作品に是非ふれてほしい。また、すぐ隣の施設にユネスコの世界遺産に登録された「石州半紙」石州和紙会館がある石州和紙の技術や技法を研修する施設であり、和紙の紙すき体験や作品展示・販売を行っており伝統文化を学ぶ事が出来る。

 古くから日本には、美しい自然に囲まれた温泉郷で健康を維持・回復する「湯治」という方法がある。温泉に入ることで血行を良くし新陳代謝を促進して老廃物を排泄する。また、温泉の化学成分にはカラダの調子を整える様々な作用があり、現代医学においても効果が認められている。

 さまざまな泉質、周囲の豊かな自然、伝統文化にふれ、ゆっくり過ごす時間…。
温泉は日本の自然がくれた、すばらしい回復剤である。温泉の持つ効能効果を学び自分や家族の健康づくりのために温泉の活用を奨めたい。



山崎勇三さんプロフィール