Vol.20_「抗菌グッズ」を過信していませんか?

広島市薬剤師会レポート_vol.20_「抗菌グッズ」を過信していませんか?


現在、身の回りの様々なものに表示されている「抗菌」「除菌」「殺菌」の文字。
あなたは、それらの意味をあまり深く考えずに使ったりしていませんか?
今回は、実は怖いかもしれない「抗菌グッズ」についてのお話しです。

そもそも「抗菌グッズ」とは?

 抗菌グッズとは、消毒剤や抗菌作用のある物質を製品に混ぜ、弱い殺菌能力を持たせたグッズのことです。元々は医療用に開発され、極端に免疫力が落ちた人を肺炎球菌などの細菌から守ったり、手術を行う医師から患者さんへの感染症を防いだりというメリットがありました。また薬の現場で使用されるアルコール綿は、調剤の際に菌の侵入を防ぐという大事な役目があります。ところが、96年に病原性大腸菌O-157が社会問題となった際に、菌の怖さを煽る情報が氾濫し、それ以降日本中に抗菌グッズが急速に増え始めたのです。現在では、家電製品から水回りアイテム、子ども用グッズや下着類に至るまで、市場規模は非常に膨れ上がっています。



人間が持つ本来の防御機能

 本来、人間の表皮には、病気の元になる細菌やウイルスの侵入を防ぐバリア機能が備わっています。最新の研究では、表皮の中にあるランゲルハンス細胞が外部からの異物の侵入を認識して皮膚の均衡を保つセンサーとしての防御機能を担っていることも解明されています。それからもう1つ、皮膚常在菌による防御機能もあります。人間の体というものは実によくできていて、皮膚には二重に細菌やウイルスを防ぐ機能があるのです。その役目を担っているのが、皮膚表面の薄い粘膜に棲息している病原菌など外敵の侵入を防ぐ役割を持つ有用菌、つまり皮膚常在菌です。



抗菌すればするほど病気のリスクが高くなる!?

 例えば病院や公共施設、ホテルなどの入り口に置いてある消毒液。これもO-157騒動以降、一般的に見かける光景になりましたが、消毒液を使いすぎると皮膚常在菌が失われたり、表皮が剥がれたりして、その部分から細菌やウイルスが侵入すると、手荒れなどの症状を引き起こしかねません。実際、96年には皮膚科の待合室がどこもいっぱいになったという話もあります。また、抗菌グッズの乱用は、多剤耐性菌が氾濫するという事態を引き起こす可能性を高めます。先に述べたように、抗菌グッズが持つのはあくまで弱い殺菌能力です。これは、強い殺菌能力によってアレルギー性皮膚炎などが発症しないようにしているためですが、つまり抗菌グッズの大半は、接触する部分に存在する細菌を一時的に減らす効果しかないのです。そしてこのことにより、生存を脅かされた菌が耐性を獲得し、より強力な菌に変身する恐れがあるのです。耐性を獲得した菌は、抗菌物質が入り込んでもすぐにそれを排除します。薬の効かない菌が増えるということです。これらの耐性菌は、あなたが病気に罹り体力が落ちたときに、暴れ出すかもしれません。



私たちは菌と共生する生き物

 体の中で最も多くの菌が存在する場所といえば「腸」です。腸内細菌という言葉も広く知られるようになりましたが、その種類は約3万種、その数は約1000兆個にも及びます。そして最近では、腸内細菌の数が多ければ多いほど、ガンやアレルギーになりにくいと言われています。このように、私たちは体の中で無数の菌と共生し、私たちの日常生活の周りにもまた、無数の菌が存在しています。世界一清潔好きと言われる日本人ですが、例えば海外旅行先で現地の水を飲んでお腹を壊すといったことも、過度な除菌や殺菌による免疫力の低下が原因かもしれません。体に害をなす菌を侵入させないことはもちろん大切かもしれませんが、行き過ぎた抗菌によって健康を損なうと本末転倒です。それよりもまず、基本的な手洗い・うがいなどの慣行を心がけましょう。



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