Vol.32_“ポリファーマシー”を防ごう

広島市薬剤師会レポート_vol.32_ポリファーマシーを防ごう


「ポリファーマシー」という言葉を耳にしたことはありませんか?
「ポリファーマシー」とは「多剤併用」のことで、特に高齢者において
副作用や薬代・医療費の増大、残薬などの問題を生じる恐れがあります。

●「ポリファーマシー」の現状

 高血圧、糖尿病、不眠など、加齢とともに体の不調は増え、服用する薬も自ずと増えていってしまいがち。厚生労働省の調査(※)によると、75歳以上の約40%が5種類以上、約25%は7種類以上の薬剤を処方されています。本当に必要な薬であればもちろん服用しなければいけませんが、もしも必要以上の薬や不必要な薬まで服用していたら、以下のような問題が起こるかもしれません。

●「ポリファーマシー」の問題点

①副作用/不必要な薬を服用したことによって他の薬との飲み合わせが悪く副作用が出たり、薬の作用が増強されすぎてしまったりという事態が考えられ、高齢者ではその可能性も高まります。また、必要な薬同士でも併用できない組み合わせがあります。異なる医療機関から処方されていたり、薬の種類が増えることで、こうした薬同士の相互作用がわかりにくくなるデメリットも。一般に、6剤以上の併用で副作用のリスクが高まるとされています。
②薬代・医療費/不必要な薬は薬代を高くし、薬の副作用を改善するため別の医療機関にかかることでご自身を経済的にも圧迫します。また、国全体の医療費増大の原因にもなってしまいます。
③残薬/服用する薬が多すぎると飲み忘れにもつながり、結果、残薬を増やしてしまいます。医師・薬剤師の指示どおりに服用しないことは疾患の改善を遅らせるばかりか、こちらも国の医療費増大の一因となります。

●「ポリファーマシー」の原因

 高齢者の多くは複数の医療機関を受診していることが多く、それぞれの医療機関から色々な薬を処方されています。その際、ほとんどの方が医療機関の近くの門前薬局で薬を受け取って帰るため、医師も薬剤師も多剤併用について気付かない場合が多いのです。また、薬を処方されることが安心感につながるため、症状の改善にかかわらず漫然と処方されていたり、薬の副作用を疾患の悪化ととらえられて新たな薬が増えてしまうというケースもあります。
 実際、認知症治療薬や抗精神病薬、睡眠薬など計6剤を処方されていた要介護5の認知症患者が、薬を見直した結果、要介護度が下がったという事例や、名称が違うため別の薬を服用しているつもりが、実は同じ成分のジェネリック医薬品だったという事例も存在します。では、こうした「ポリファーマシー」を防ぐためには、どうすればいいのでしょうか。

●「ポリファーマシー」を防ぐ

 まず大切になってくるのは、「お薬手帳」(現在は無料のアプリもあります)の活用です。お薬手帳は、どんな薬を処方してもらったかを記録しておく手帳で、これを携帯し医療機関や薬局に提出することで、医師や薬剤師が同じ効果の薬や飲み合わせの悪い薬を確認することができます。結果、薬の種類が減らされる例も少なくありません。
 また、「かかりつけ薬局」を作ることも有用です。様々な医療機関で出された処方箋を、持って行く薬局を1つに絞ることで、薬局側は併用や重複などの服薬状況を管理しやすくなります。さらに、コミュニケーションのとれている「かかりつけ薬剤師」であれば、健康相談や市販薬購入の相談もしやすくなるのではないでしょうか。
 高齢になるにつれ、疾患に対して合併症が起こることも多く、医療機関の受診やそれに伴う薬の処方も増えがちです。ですが、処方された薬を決して自己判断でやめたりしないでください。薬の量が多くて服用が困難であったり、薬の副作用が出てきて不安なら、まずは医師・薬剤師にご相談ください。「ポリファーマシー」について、適切なアドバイスを受けられるはずです。

※平成28年社会医療診療行為別統計
薬剤師会_DATA_201910