トラブルのない相続のために知っておきたいこと

writer:一久保 直也

相続はだれにとっても身近なもの

 相続の発生とその後の遺産分割の問題は、自分が亡くなった後の話なので、なかなか自分自身の問題として実感しにくいものです。また、「うちは財産があまり多くないから大丈夫」と思われている方も多いかもしれません。しかし、財産が全くゼロの状態で亡くなられる方というのは、そう多くはありません。そして、財産の多い少ない、価値の有り無しにかかわらず、亡くなられた方の財産を処理するためには、相続人全員での協議が必要となることがほとんどです。例えば、ごく僅かな預貯金の払い戻しでも、遺産分割協議書の提出や相続人全員の署名や印鑑証明の提出を窓口で求められることは多いです。田舎の田畑や山林であっても、相続人の一人に名義変更する場合や売却をする場合には、相続人全員の関与が必要となります。つまり、相続とその後の遺産の処理にまつわる問題は、誰にでも起こりうることなのです。

遺言の活用場面とは

 「うちはみんな仲が良いから大丈夫」と思われている方も多いのではないでしょうか。しかし、仲が良かったとしても、遺産分割協議書の作成や署名・押印、印鑑証明の提出等が求められることがあります。相続人全員が近所ならさほど手間ではないかもしれませんが、仕事で時間が取れなかったり、遠方に住んでいる相続人がいる場合は、なかなか時間が取れずに手続は進まないのものです。親族間の仲が悪かったり、疎遠になっている場合には、手続が完全にストップしてしまう場合も珍しくありません。そのような手間やトラブルを遺言を作成しておくことで避けることができます。

遺言の種類

 民法には、いくつかの種類の遺言が規定されていますが、実務で見かけるほとんどは、自筆証書遺言と公証人役場で作る公正証書遺言です。読んで字のごとく、自筆証書遺言とは、自分で書いて作成する遺言を指します。費用が掛からず、自分ひとりでも作成できる、内容を人に知られないなど、メリットがあります。しかし、自筆証書遺言には、形式面で気をつけなければいけない点があり、形式面の不備で無効となるおそれがありますし、秘密にできる反面、誰にも発見されなかったり、隠されたりという危険もあります。公正証書遺言は、費用が多少掛かりますが、形式面の不備は起きにくく、公証人役場で保管されるので偽造・改ざんや隠されるおそれはありません。公証人役場に行くことが難しければ出張をしてくれるところもあります。

相続のその他の問題

 遺言を作ったことで財産の処理が楽になったとしても、遺言の内容を十分検討していなかったため、相続税の負担や遺留分(最低限保証される権利)侵害の問題で、新たな紛争が起こることがないわけではありません。税制改正により、相続税の負担が発生する割合は増えていると思いますので、不安があれば、遺言を作成する前に、一度専門家の意見を聞いてみられたほうが良いかもしれません。



一久保直也さん