考・熟年離婚

32_考・熟年離婚


長年連れ添った夫婦が「熟年離婚」することは珍しい時代ではなくなりました。
夫婦関係には年月が長ければ長いほど、いろいろなことがあります。
最初は「何があっても一緒に乗り越えていこう」と思っていても、
いつしか気持ちが変わってしまうことも。ただ、実際に別れを選択する前には、
さまざまな葛藤があります。経済的にも健康面でも、
離婚は夫婦それぞれのその後の人生に、大きな影響をあたえます。
別れるべきか、踏みとどまるべきか…。
50代からの離婚について、改めて考えてみました。




熟年離婚は年々増えている!


 厚生労働省の統計によると、50歳以上の夫婦が離婚した件数は、1970年は5416件でした。それが、1990年から2000年にかけて 一気に増え始めました。1990年には約2万件だったのが、2000年には約5万7000件になり、近年は6万件前後で推移しています。この数字だけを見てもものすごい勢いで熟年離婚が増えていることがわかります。この熟年離婚に至った原因は一体どんなものが多いのでしょうか。

・とにかく一緒にいるのが苦痛
・親の介護問題
・夫婦の会話がない
・子どもが自立したから
・価値観の違い
・女性の自立
・浮気や不倫問題
・セカンドライフプランが異なる

 つまり長年、夫に対する不満に耐えてきた妻が、離婚を決断するパターンが大半を占めるようです。
 また、若くして不仲になっても「子どもが成人するまでは」という取り決めのもと、仮面夫婦状態で長らく一緒に過ごし、熟年になって決断するという夫婦もいます。
 そして熟年離婚が増加しているもう一つの理由としては、2007年から始まった年金分割制度の開始が挙げられます。この制度によって、離婚後の妻の経済的不安が軽減されたため、特に仕事を持たない専業主婦にとって、離婚を後押しするメリットとなっているようです。
 「子どもが巣立った後、夫とどう過ごしていいのかわからない」「夫の定年後、生活が落ち着かない」という人は、熟年離婚の危機に陥る可能性があるそうです。お互いがいつまでも幸せに過ごすために、夫婦のあり方や、これからの人生について考えてみてはいかがでしょうか。



50歳以上の離婚割合の推移

1970年に全体の5%に満たなかった50歳以上の離婚率ですが、近年では15%を超え、以前の3倍以上となっています。1990年から2000年の間が最も推移が大きく、その後はゆるやかではありますが、年々増加の傾向にあります。



夫婦の年齢別にみた離婚の割合

夫と妻ともに40代後半での離婚がピークと考えられます。一般的に20年以上婚姻関係が続いた夫婦は熟年夫婦といわれますので、40代でも熟年離婚に至っている夫婦もいるでしょう。60歳以上で離婚する夫婦も全体の3%と多くはないですが、それでも離婚に至る夫婦がいることがわかります。









ある夫婦の熟年離婚を検証

あなたは長年人生を共にしてきた妻、夫のことを理解しているでしょうか?
そしてコミュニケーションを図る努力をしているでしょうか?
鳴門教育大学の浜崎隆司教授に「なぜ離婚にはしるのか」について
心理学的に分析していただき、熟年離婚を回避するアドバイスをいただきました。



浜崎教授




熟年離婚したいと本気で思いますか?


 1986年に結婚した森進一さんと森昌子さん。妻昌子さんは、結婚を機に芸能活動を休んでいましたが、2001年に、再始動しました。その中に夫進一さんとのジョイントコンサートも含まれていました。しかし、これは進一さんの希望であるものの、昌子さんにとっては不本意な活動だったようです。さらに子どもの教育方針において「学業優先」の進一さんと、「芸能活動でも良い」という昌子さんとの間には、考え方の違いがあり、その結果昌子さんは、心労がたまってしまい、2人の子どもを連れて自宅を出ることになります。世間では一時おしどり夫婦と言われて幸せな様子でしたが、この後徐々に離婚への決意が固まっていきます。
 さて、この2人は、実際に離婚しなければならない夫婦だったのでしょうか?離婚の原因は、自分は正しい、相手は間違っている。だから、相手をコントロールし、自分の思うようになってほしいという考え方にはじまります。ですが「人は人を変えることはできない」という法則(選択理論心理学)があります。あえて、この2人が離婚に至らない架空のストーリーを展開してみましょう。進一さんは2人での活動、昌子さんは1人での活動を望んだようです。進一さんがこう言います。「一人で歌うことも大切だよね。昌子は一人で歌いたいんだね。基本は昌子一人での活動にして、時々でいいから仲良く一緒に歌うことってできないかな?」「進一さんは2人で歌いたいのね。できるかどうかわからないけどスケジュールを工夫してみるね…」という会話になります。この会話では、相手を批判したり、文句を言ったり、ガミガミ言ったりせずに、話を聞き、その内容を尊重します。これは考え方の違いの交渉という方法です。
 2人は芸能活動にお互いの考えをどう取り入れられるか、お互いの考えの違いをどうすり合わせたらいいのか、そして最も大切なのは、自分が我慢していればいいという解決法ではなく、夫婦関係をこれからも良好に保っていくにはどうしたらよいか、そのためには相手の行動や気持ちの変化に期待するのではなく、自らがそのために何ができるかという視点に立ちます。この場面では、相手が変わるかどうかわからないけれども、自分は変わることはできるということを2人は理解しています。自らの行為や考え方が変わると夫婦関係がいい方向に変わる可能性が出てきます。可能性と書いたのは、自分が変わることで相手が変わるかどうかは相手次第だからです。それでも、相手はあなたの変化に少し驚くかもしれません。
 夫は妻を変えることはできないのです。妻も夫を変えることはできないのです。無駄に相手をコントロールするエネルギーを捨て、2人が同時に幸せになる方法はないものか模索していくのは、熟年になって離婚を考えなくていい夫婦です。相手がこう変われば、離婚せずに仲良くやっていけるのにと思っている人は、こう考えてみてください。自分が変わるとどうなるのか?人は変えることできなくても自分自身は変えることは可能です。相手を変えようとして、しかめつらをしてガミガミいうのをやめるだけでもどれだけ効果があることか?相手の話をじっくり聞き、非難せず、「うんうん」とうなずいてみてください。相手もいい顔になりますが、あなたのしかめつらが、笑顔に変わります。もちろん、今までの自分を変えることは相当の勇気が必要ですが、自分ができる簡単なことから始めたらいいのです。30年間朝の挨拶さえしなかった夫が、ある朝「おはよう」といいます。どうなると思いますか?
 離婚したら、孤独感が待っています。歳をとるほど周囲の人から相手にされなくなります。何の見返りもなく、あなたを支えてくれるのは、長年連れ添った夫婦の関係です。それでも離婚を考えますか? 



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結婚歴15年以上の方に質問しました



はたじょアンケート_Q1



はたじょアンケート_Q2



はたじょアンケート_Q3


はたじょアンケート_Q4



※「はたじょ」調べ ●調査期間/2018年5月16日〜18日
●年齢/30〜39歳 21%、40〜49歳 64%、50歳以上 15%





踏みとどまった私たち夫婦の危機

私は踏みとどまりました。


 父はビールを半分も飲めない、いわゆる下戸でした。母は体質的にはお酒に強かったようですが、何も変わらないからとお酒を飲むことはありませんでした。そんな家庭で育った私には、アルコール依存・アル中の人がいる生活は想像もつきませんでした。しかし舅は、列記としたアル中経験者でした。彼は「自分は絶対に父親みたいにはならない」と言っておりましたが…。
 舅姑の為に家を建て同居を始めたのは、結婚して27年もたってからです。舅姑共に同居生活をとても喜んで、楽しく過ごしておりましたが、一番有頂天になっていたのは、彼だったようです。同居したら嫁に気を使うとか、ありがたいと思うなどは微塵もなく、何年か前から気になっていたお酒の飲み方も、尋常ではなくなっていました。30代の頃あまりの身勝手さが要因で、別れ話が出たこともありましたが、子供たちにとっての父親は彼しかいないとの思いで、実行にはうつせませんでした。しかし、お酒が入ることで理不尽な発言は増え、異常な行動も起こり、もう限界を迎えました。
 私は何冊も本を読み、身の守り方を探りました。色んなことが腑に落ちていく中で、離婚しなかったことで子供達に悪いことをしてしまったと、自分を責めました。自分は働いているんだからと、土日はゴルフにテニスに、長男とキャッチボールをしたこともない彼。子供のことも働いている私のことも、まったく見ていない。普通の人と再婚していたら、子供たちに寂しい思いをさせなくてすんだかもしれないと、悔やまれました。
 しかし、彼の会社の先輩が見かねていった一言で病院へ行き、「このままいったら、仕事でも失敗し家族にも見捨てられ、果ては狭いアパートで孤独死でしょうね」と言われ、やっとアルコールを断ち7年が過ぎました。人は変わるものです。しかし、また最近飲み始め、時々酒に飲まれることがあるようです。私は決めています。今度アル中になったら、四の五の言わずにすぐ離婚することを。彼には内緒ですよ。






熟年離婚の注意点

熟年離婚の注意点は財産分与。一緒に過ごした期間が長い分、共有の財産も様々です。
預貯金や不動産だけでなく、思わぬ共有財産があることも。
今回は熟年離婚における注意点を一久保法律事務所の一久保直也先生にうかがいました。


注意点の多くは財産分与。
夫婦の共有財産をしっかり確認しましょう。


 夫婦が離婚をするときに弁護士の立場でアドバイスをすることがありますが、話し合いが長引く要因として、子どもの親権や養育費の問題があるように感じます。熟年夫婦では、夫婦の間に子どもがいたとしても、子どもが成人して独立している場合が多いので、親権や養育費が問題となることはあまりありません。そのため、お互いが「離婚には応じる」という気持ちを持っていれば、離婚自体はスムーズにできることが多いのではないかと思います。
 しかし、熟年夫婦の離婚だとしても、注意しなければいけない点があります。それが財産分与です。
 夫婦のどちらかが働いている場合であっても、共働きであっても、家計の管理の方法は様々です。一方の収入を生活費や子どもの学習費用に充てる、他方の収入は貯蓄に充てるなどの理由で、婚姻中に夫婦のどちらかの貯蓄だけが増えていくという状況は珍しくありません。そのように、いろんな理由で起こりうる夫婦の財産のアンバランスを、離婚時に調整する手段、それが財産分与です。
 財産分与は、離婚から2年以内に請求しないと時効により請求できなくなります。そのため、「子どもの問題もないので、とりあえず離婚だけしてしまおう」という考えで離婚は早々に合意し、その後「自分の貢献した財産については、きちんと清算しないと」と思っても、時効により請求できない場合もあります。この点は、まずはご注意ください。
 財産分与をすることになった場合、まずは分与の対象となる財産を調査し、何対何で分けるかという割合を決定しなければいけません。
 財産分与で分与の対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦で協力して作った財産です。預貯金や不動産はもちろんですが、それ以外にも勤めていた会社の給料から天引きされている財形貯蓄や株式、保険の解約返戻金などが対象となることもあります。
 対象となる財産の中で、見落とされがちなものとして、退職金があります。退職金については、夫婦の婚姻期間中の給与の積み立てという意味合いもありますので、財産分与対象財産と判断されることがありますし、退職前であっても退職金の見込み額を財産分与の対象として計算することもあります。厚生年金も分割の対象となることがあります。
 財産分与と対象となる財産を確定した後には、「その財産を何対何で分けるか」という分与割合の問題となります。これについては、男性の方が給与を多く貰っていることが一般的には多いので、女性はあまり多くの割合を求めることができないように感じられるかもしれません。
 しかし、専業主婦であっても、家事や育児での貢献が仕事を支えているとして、働いている配偶者と同等、つまりは5対5と評価されることが多いです。
 夫婦で形成した財産は、老後の生活の支えとなる大切なものと思います。財産分与の請求というのは、それを確保する大事な権利ですので、覚えておいていただければと思います。



弁護士・一久保先生